初診外来にでるようになった内科専攻医がはじめにぶち当たる壁と言ってもいいかもしれません。初診外来は病院によりますが内科専攻医が担当することがほとんどだと思います。他院からの雑多な紹介を各専門外来に振り分けたり、検診異常に対する対応をしてフォローアップしたり検診実施施設に文書を提出したりと、何の専門家でもない専攻医であるからこそ与えられる雑務…😂
今回は日本高血圧学会が出している2019年版「高血圧ガイドライン」と僕の尊敬する腎臓内科医おちば先生のブログを参考に、二次性高血圧のスクリーニング検査についてまとめてみました。

検診異常で高血圧の方が来ました!

煩雑な二次性高血圧のスクリーニングについてガイドラインをよく読んで理解しましょう
二次性高血圧とは?
二次性高血圧の定義
ある特定の原因による高血圧は二次性高血圧と定義される。二次性高血圧の中で、頻度の高いものとして、腎実質性高血圧、原発性アルドステロン症、腎血管性高血圧、睡眠時無呼吸症候群などがあげられる。
高血圧ガイドライン2019より抜粋
ガイドラインによるとこのように定義され、その頻度としては依然考えられていたよりも高く、全高血圧患者の10%以上にも上ると言われている。
どんな高血圧患者に二次性高血圧のスクリーニング検査を行う必要があるのか?
その前に除外するべき2つのこと
- 白衣高血圧
- 内服コンプライアンス不良
初診時以外の場合ですが、白衣高血圧の除外のために家庭血圧を血圧手帳でつけてきてもらうことや、内服のコンプライアンスが保たれているかどうかを除外することは必要です。
まずは本態性高血圧と二次性高血圧の臨床像について知る必要がある
<本態性高血圧の臨床像>
一般に本態性高血圧では家族歴が濃厚。血圧は20歳₋30歳代からやや高めで加齢に伴ってさらに高くなってくる。
<二次性高血圧の臨床像>
若年発症の重症高血圧や50歳を過ぎてから発症した高血圧では二次性高血圧を疑う。また、重症高血圧や治療抵抗性高血圧はもちろん、これまで良好であった血圧の管理が難しくなった場合でも二次性高血圧を疑う。一度スクリーニング検査をして本態性高血圧と診断しても、数年後に二次性高血圧が合併してくることも珍しくはない。
二次性高血圧を疑うために
二次性高血圧の可能性はすべてのく血圧患者の診療において念頭に置くべきであり、示唆する所見を見逃さずに、適切な検査を実施することが必要。

そんなこと言われても、どう問診していいかわかりません。

自分はひとまず、高血圧の家族歴といびきについてと原因となる既往や薬剤・サプリがないか
あとは血液検査で不自然な低K血症がないかを聞くようにしているよ。
一般の方は睡眠時無呼吸症候群(=いびき)が高血圧の原因になるなんて思っていない人も多いんだ。
二次性高血圧のスクリーニング検査について
疑ったら次はどの検査を出せばいいのか、迷うかと思います。まずは二次性高血圧の疾患と行うべき検査について考えましょう

高血圧ガイドライン2019に記載されている表を参照すると、上記のように原因疾患と対応する提出すべき検査がまとめられています。
この表を参考に鑑別疾患を想定して検査を進めていくことになります。
実際の検査の進め方

高血圧ガイドライン2019では、二次性高血圧スクリーニングについて、実際に患者さんが検診で高血圧を指摘されて、初診外来にやってきた状況を想定してスケジュールまで記載してくれています。
具体的には腹部エコーはルーティンでやっていて、副腎腫瘍を強く疑う所見がみられた時には腹部骨盤の単純CT・造影CTを追加しています。褐色細胞腫は基本的には粗大な腫瘤を形成することが多いので、読影結果を待たなくても自分の目で見て指摘できることが多いです。
注意点としては、ホルモン検査については早朝安静時の採血検査が推奨されていることです。朝一番で来院された場合を除いては、再診外来の時に、朝8時30分に来院頂き、安静30分の後に採血検査を実施した方がよいです。
体格や自覚症状、家族にいびきを指摘されたことがあるなどの病歴は聞くと案外高確率で教えてくれます。その際には簡易アプノモニター検査を追加しましょう。簡易アプノモニターの検査の解釈はざっくり言うと、AHI(1時間に何回呼吸停止があるか)が40以上でCPAPの適応になります。(20以上で睡眠時無呼吸症候群の診断)ですが、じゃあAHI20~40の人はどうするのという話になります。
その場合には、PSG入院が必要となります。PSGでAHI20以上ですと、CPAPの適応となります。ややこしいですね。PSG入院は個室である必要性があり、個室量と検査料も含めると1泊2日なのに入院費が3割負担で4₋5万円になるので、本人の了承が得られることが前提です。
以下は検査のフローチャートです。実際には細かい追加検査を実施する場合もありますが大抵はこのフローチャートに従って検査していけば問題ないです。下垂体腫瘍を疑った場合には5T(テスラ)以上の解像度の頭部MRIが必要となるので注意してください。

いかかだったでしょうか。初診外来に高血圧の患者さんが来た際の対応について勉強になったでしょうか。ただでさえ時間のない初診外来で迷う時間を減らしてどんどん患者さんを診ていきましょう!!
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